2013年3月13日水曜日
【書評】WIRED 特集 未来の会社~これからの「働く」を考える
ワイヤードの最新号で「未来の会社~これからの『働く』を考える」 が特集されていました。「働く」ことについて、これからの社会で必要なマインドセットがまとめられています。
私が感銘をうけたのは、メディアセオリストのダグラス・ラシュコフ、oDesk CEOのゲイリー・スワート、Pinboard創業者のマチェイ・チェグロフスキへのインタビューをもとに執筆された記事です(あまり日本では取り上げられることの少ない3名ですね)。
社会があたりまえと考えているような単線的なライフストーリーではなく、自分がどう生きたいのか、そのためにどんな働き方をしたいのかを軸に据えて、働く側の意志によって仕事やキャリアをコントロールしていくことが大切だと説いています。
本書でも随所で事例が掲載されていますが、自分の価値が市場や産業によって一方的に決められるのではなく、自分が何ができるか、何をしてきたかという視点で価値づけられる働き方が実現しつつあります。
個人的な感想としては、優秀な人ほどそういった働き方を実践しているように感じていますが、企業も今後そういう人たちにアピールするために、自分たちの価値観やミッションを積極的に提示して、そこで働くことのメリットを提示していく必要に迫られてくるでしょう。
本誌では、Facebook、サムソン、AOL、Squareなどのテック系企業のオフィスデザインを担当してきたSTUDIO O+Aが紹介されています。ここ数年、「オフィスというものを自社の文化や価値観を表象するための表現とする傾向」が目立ってきていると言います。
STUDIO O+Aは、上司の目が行き届くところに部下のデスクを配置するような管理型のオフィスではなく、生活の一部としてオフィスが溶け込んで、クリエイティブな発想が生まれてくるような空間を積極的に作り上げています。
そう考えると、働き方の大きな変化は、フリーランス(個人)、中小企業、大企業を問わず、社会全体がその影響を受けることになるでしょう。
これまでは、ノマドvs会社員というように、それぞれをまったく価値観の異なる次元と捉えられることが多かったように思います。そのため、両者の議論はどこかかみ合わず、感情が入り混じった言い合いになる場面も見て来ました。
しかし、会社員とノマドは働く形態の違いこそあるものの、自分自身でキャリア形成や仕事をコントロールしていくことを主眼に置いているのであれば、十分に共存/共闘しあえるのではないかと日々感じています。逆にノマドを気取っていても、他者に働き方を規定されてしまっているようであれば、もう一度キャリア形成を考えなおしたほうがいいでしょう。
本書では新たな価値観や理念が提示されていますが、欲を言えば「働き方」に関してもう少し具体的な事例があったらなというところでしょうか。最近は将来の仕事や働き方についての議論が、ときにセンセーショナルに語られることも多いですが、決して煽られず、自分にとって何が大切かを今一度考え直すきっかけにしてみてはいかがでしょうか?
ちなみに、この本を買うと同誌のPDF版がウェブ上で無料でダウンロードできる特典がついてきます。iPad、iPhone、Kindle Fireなどで閲覧できます(私も就寝時にiPhoneで記事を読みました)。