著者は2006年に、レバレッジ・リーディングという読書術を提唱。本の内容を単にインプットするだけでなく、それをアウトプットに結びつける方法を提案しました。書籍に費やすお金と時間を未来の自分への「投資」と位置づけるアグレッシブな読書法の普及に貢献したお一人です。
本書で本田さんは、レバレッジ・リーディングを「リーディング2.0」と位置づけ、クラウドやモバイルを活用した「リーディング3.0」へと発展させています。
リーディング3.0 ―少ない労力で大きな成果をあげるクラウド時代の読書術 本田 直之 東洋経済新報社 2011-04-22 売り上げランキング : 1435 Amazonで詳しく見る |
この数年、ウェブ業界では電子書籍に注目が集まっていますが、本田さんはそれをあくまでメディアのひとつと捉えて、紙媒体やウェブ情報を含めてあらゆるメディアから情報を収集することの重要性を説いています。
その意味で本著は「紙の本は終わった」という単純な議論には汲みしていません。大切なのは紙か電子かではなくて、獲得した情報をアウトプットにつなげていくことなのだと。つまり、レバレッジ・リーディングでもリーディング3.0でも、その目的は一緒で、違うのはそこに至るツールとスキルなのだと言うことではないかと解釈しました。
本田さんは、クラウドやモバイルといった新たなインフラを活用する力を「ノマド・リテラシー」と呼んでいます。Evernote、Twitter、Facebook、RSSリーダー、iPhone、iPadなどは、私も普段から活用しているツールですが、これらを生産的な読書に活用する能力が問われているように感じます。
『レバレッジ・リーディング』で紹介された「レバレッジ・メモ」があくまでも紙ベースだったのに対し、「リーディング3.0」のそれはEvernoteとiPhoneを利用したクラウドベースのものへと移行していきます。
「・・・クラウドサービスが生み出したのは、制約のない働き方だけではありません。「制約のない読書」もこの時代の産物であり、これこそがリーディング3.0の本質です。」と述べているように、クラウド時代の読書は「物理的な制約」「場所と時間の制約」「情報シェアの制約」を打ち破ります。
中でも大きな特徴は、「情報シェアの制約」で、アマゾンKindleが提供する「ポピュラー・ハイライツ」という機能はまさに革命的であると説明しています。これは、Kindle上でユーザーがどこに線を引いたかをDBに蓄積し、もっとも多く線が惹かれた部分を読者に教えてくれるというサービスです。
「世界中の全く知らない人が、本を読みながらどこに線を引いいているかを共有できる。これはいまだかつてなかった「シェア」時代の到来です。1冊の本という共通点で、多くの人の意見を知ることができるのです。」
「読み手の意見が、その本の読み方を創っていく。意見は日々変化し、更新される。」これは「リーディング3.0」と「リーディング2.0」の決定的な違いで、時代を分ける画期的な出来事と言っても過言ではないように思います。
さらに、アウトプットのプロセスで欠かせないのが、TwitterやFacebookなど、ソーシャルメディア上での「シェア」活動。特にTwitterは、ブログと違って、読んだその場で共有できるので誰でもすぐに始めることができます。
自分の中だけで完結させるのではなく、他者との共有や(共有することによる)社会への「コントリビュート」を前提とすることが「リーディング3.0」の大きな特徴であり、魅力なのではないでしょうか。
他者や社会を意識し、その中での自分の役割を意識し、そこでどんなコントリビュートができるかを意識する。読書というものが、自分自身を知り、社会との関係を構築するプロセスになりつつあるということなのではないでしょうか。
この本は東日本大震災の前に執筆されたものだと思いますが、そう考えると本田さんが提唱する
「リーディング3.0」は3.11後の日本社会にとって決定的に大切なもののように思えてなりません。
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<目次>
Chapter 1 リーディング3.0時代の到来
Chapter 2 リーディング3.0の基本
Chapter 3 リーディング3.0に必要な6つの能力
Chapter 4 スマートフォンが読書を進化させる
Chapter 5 紙メディア・電子メディアの活用法
Chapter 6 読書からソーシャル・リーディングへ
Chapter 1 リーディング3.0時代の到来
Chapter 2 リーディング3.0の基本
Chapter 3 リーディング3.0に必要な6つの能力
Chapter 4 スマートフォンが読書を進化させる
Chapter 5 紙メディア・電子メディアの活用法
Chapter 6 読書からソーシャル・リーディングへ