2009年に発売されて、週刊誌などでも頻繁に取り上げられていた著書『フリー:〈無料〉からお金を生みだす新戦略』の電子版が期間限定でiTunesストアで無料公開されています。無料の期間は1週間。紙の書籍だと1890円するものが0円で入手可能です。
『フリー』を出版しているNHK出版はShare Readerという新しい電子書籍販売サイトをオープンしました。Share Readerの面白さは、本に書かれたフレーズを共有できること。iPhoneのアプリで提供されている電子書籍からも気になった文章を簡単にシェアできる仕組みが提供されています。
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電子書籍の普及が叫ばれていますが、そこでは「読書体験を共有する」ことが一つのキーワードになっています。従来は個人的な営みだった読書をよりソーシャルな方向でオープンにしていこうというものです。具体的には、付箋を貼った部分や書き込んだメモをオンラインで共有するような仕組みが提案されています。他の人の解釈や読解が新しい発見をもたらしてくれたり、読書を通じて考えをより深めたりといったことが期待されています。
20世紀のメディアは「個人化」の方向に進んでいきました。その代表がSonyのウォークマン。イアホンを通じて音楽を聞くことで、従来はパブリックなものだった音楽を、個人で楽しむものへと変貌させていきました。その他にも、エンターテイメントを個室のテレビのビデオやDVDで楽しむようになったことも個人化の一例です。
ソーシャルな読書体験などインターネットを通じて起こっていることは、20世紀に向かったのとは逆の方向を追求しているように思えます。たとえ部屋の中で一人で読書をしていても、オンラインの「他者」と常に繋がっているわけです。Share Readerの仕組み自体は今後改良の余地も残していますが、今後の電子書籍出版はソーシャルな側面を無視しては発展し得ないことを表しているのではないでしょうか。