2010年10月20日水曜日

【書評】決闘 ネット「光の道」革命

決闘 ネット「光の道」革命 (文春新書)
決闘 ネット「光の道」革命 (文春新書)孫 正義 佐々木 俊尚


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ソフトバンク社長の孫正義氏と、ジャーナリスト佐々木俊尚氏。
この異質な二人がU-Streamで展開した対談の記録です。

「光の道」とは、情報通信政策に関して原口一博総務大臣が提唱したビジョンの一つで、2015年までに光回線の普及率100%を達成しようというもの。

孫社長はこの案に100%賛成。佐々木氏はそんな孫氏に「全面不同意」。

別々の考えを持つ二人は分かり合うことができるのか?あるいは決裂して物別れに終わるのか?巌流島決戦を彷彿とさせる目が離せないスリリングな展開が幕を開けます。

私はU-streamやニコニコ動画で二人の対談を見ないで本を手に取りました。
読後に動画を拝見したのですが、動画で見るよりも文字で見るほうが「ガチ真剣勝負」な感じが伝わってきます。二人とも穏やかで説得力ある口調なので、ついつい惑わされがちですが、話している言葉は強く厳しい。この種の対談モノにありがちな、予定調和や慣れ合いというものが全く存在しません。

長い間、事業家として情報通信分野に携わってきた孫氏のプライドと、彼のレトリックに飲み込まれまいとするジャーナリストとしての佐々木氏のプライド。プロフェッショナルの意地と意地が紙上で展開されます。

この本を読んで、政府レベルでどのような議論が行われているのか、そしてそこにはどのような可能性と課題があるのかを整理することができました。単に情報政策分野にとどまるのではなく、国家戦略の肝になるものということが伝わってきました。

ネットの仕事に従事していると、日々の業務に追われがちですが、こうした課題に目を向けて必要に応じて常に意見を発信していくことも大切なのだろうと実感しました。


ちなみに、孫氏は自らを巌流島決戦に挑む宮本武蔵に、そして対する佐々木氏を佐々木小次郎に見立てています。佐々木氏は、二人だけで腹を割って話しましょうということだったのに、スタジオに行ったらスタッフが多くて戸惑ったというエピソードを披露しています。

巌流島決戦には、宮本武蔵が自分の子分を物陰に潜ませて、佐々木小次郎を集団リンチしたという説も存在します… ただし、対談では幸いにも佐々木氏は袋叩きに合わずにすんだようで…。