「紙版を解約して電子版に切り替えよう!」
と思ったら電子版だけで4000円(宅配とセットの場合は5383円)もかかることが判明⇒ネット上で非難の嵐。スタートからものすごい逆境に立たされたわけです。
私はリリース時から使っていますが、あれから2ヶ月ちょっとが経ちました。日経にとって逆風の中、私は敢えてその意義を見出してみようと思います。
結論を先取りして言えば、日経電子版は日本史上初めて電子スクラップを実現したという功績を残したのです。
まず、私が感じた日経電子版のメリットを2点挙げてみます。
(これが電子スクラップを実現するための前提になります)
紙版に掲載されたすべての記事が閲覧可能
これはとても便利です。
主要記事はもちろん、特集記事、地方版、読書欄、コラムも全て利用できます。
5/17のブラジル特集、5/31の大連特集も読むことができます。
同様に朝刊紙面をウェブで提供しているものに、朝日新聞のFullコースがあります。
ただし、朝日新聞では主要な記事しかウェブで読むことができません。特集や調査報道などのイレギュラーな企画記事は、Fullコース会員向けに提供されていないのです。
新聞が提供する情報は
- 事実としての情報
- 識者・記者の分析
主にこの二つだと思っています。
二つ目の「分析」は特集記事で書かれることが多いんです。
分析が提供してくれる視点は、物事を考える上で役立つことが多い。
速報系ニュースはネットの方が充実している昨今、分析記事の重要性はむしろ増しています。
だから、朝日新聞のFullコースは全記事提供できていない時点で、その価値を半減させてしまっているわけです。
ちなみに、紙の新聞を読むにはページをめくるという動作が必要です。
これはウェブにたとえると「横スクロール」。
ところが、日経電子版の場合、記事は縦スクロールで読み進めていきます。
「横」と「縦」。
要するにこれまでとは全く逆の動きになるわけです。
縦スクロールをして関心がある記事を見つけたら、見出しをクリックして記事の中身を読みます
そこのことで私は「横スクロール」のときは見過ごしていた地方版の記事を読むようになったのが意外な収穫でした。
全文がテキスト化されている
当初、日経電子版の目玉とされたのが、紙版と同じレイアウトで見れるということでした。
しかし、新聞のレイアウトは、PCで閲覧するのに最適化されたものと言えるでしょうか?
むしろ、PC画面上ではテキストですべての記事が提供されていることの方が重要だと私は考えています。
日経の場合、紙面をそのままFlashで見せる以外に、テキストで全文を提供してくれています。
産経新聞のiPhone/iPadアプリのように画像だけの提供ではありません。
テキストでのコンテンツ提供は、「自分データベース」を作る上で欠かすことができない要素です。
私は日経電子版の記事をコピーして、Evernoteで電子スクラップを作成しています。
新聞記事をフローの情報として読み流すのでなく、ストックとしてDB化しようとすると、テキスト=生データはなくてはならないものになります。
紙面のレイアウトをそのまま見られるというのは、メディア受けも良くてインパクトがありますが、本当の価値は「すべての記事」が「テキスト」で提供されていることにあると思っています。
これこそが今回の日経電子版の最大の価値だと思います。なぜなら、それによって「電子スクラップ」が日本史上初めて実現可能になったからです。
ただし、日経電子版が「画期的」なのは、日本国内に限ったことです。
例えばイギリスではFinancial Timesがプロアカウントユーザー向けに、全文提供サービスをとっくにやっています。しかも、紙よりも安い価格で。
そう考えると日経は当たり前のものを提供しているにすぎないと考えることもできます。
さらに、使ってみるとやっぱりページのローディングに時間がかかるとか、値段が高すぎるとか色々文句はあります。
それでも、新聞記事をScan Snapでスキャンして、PDFに変換するよりも作業効率は全然高いです。
紙の値段に+1000円払うだけで、スクラップ作業の効率化を図れるならそれだけでも価値があると思います。糊や台紙だけでなく、カッターすら必要ないわけですから。
趣味でスクラップをしている人はあまりいないと思いますが、仕事でどうしてもやらないといけない職種の人もいるでしょう。その場合、これは必要な投資だと思います。
スクラップ術についてはまた別の機会に紹介します。